日曜日, 8月 17, 2008

「アンソニー ベイルートを喰らう」



ケーブルテレビなどでディスカバリーチャンネルを観られる方にお薦めする。

「アンソニー **を喰らう」は、罪のない観光兼「食」の番組である。ホストのアンソニーは、NYのレストランのシェフらしいが、世界のあちこちに旅をして、三ツ星グルメから町の屋台までいろいろと食べ歩く。先日は大阪の食い倒れ街を紹介していた。

番組の最初を見逃したが、彼は今回、レバノンの首都ベイルートにいた。普通の料理紹介番組を制作放送するはずだったのだろう。
ところが、状況が違った。

滞在中に南部?で、イスラエル兵が殺害・拉致された。それを喜ぶヒズボラ支援派のベイルート市民を彼らは撮影しているが、その時にも彼らの現地サポートがいう。「報復があるだろう。」
そしてそれは現実になった。空港が爆撃され、滑走路が使えなくなった。脱出路を失ったまま、戦争状態に巻き込まれたのである。

現地コーディネイターなどが次々といなくなる中、彼らは外国人用?のホテルに避難し、高台のプールサイドから、眼下の街並が爆撃される様を目撃することになる。わたしは「ホテル・ルワンダ」を思い出した。舞台となったあのホテルの状況だ。
彼らはそのホテルで周囲の状況をレポートし、ブッシュの無能に憤慨し、9日目に米軍の上陸用舟艇と戦艦?ナッシュビルで現地を離れる。

お気楽?な撮影チームが戦争状態からのbailoutを記録することになったのだ。そこのところの、一般的な戦争報道との目線の違いが、番組を興味深いものにしている。
再放送もあるので、この回はぜひご覧頂きたい。お薦めである。

「ダークナイト」




「ダークナイト」 クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ヒース・レジャー、ゲイリー・オールドマン、アーロン・エッカート、モーガン・フリーマン他

バットマンの映画にはあまり興味がない。ジョージクルーニーがでていたな、それからなんとかいう元コメディアンの人?、シュワルッネーガーが悪役、ジャック・ニコルソンの奇演が面白かった、などなど。アメリカンヒーローもので、テイストとしてはコメディチックなホラーなような、というイメージであった。まあテレビでやっていれば見るかな、といった感じ。

町山智博という人がポッドキャストをやっている。最近の彼の番組で彼がハリウッドの今について語っていた。いわくハリウッドはもうコミック原作ものか、漫画しか撮れない。アカデミー賞にしてもそういうものばかり。製作資金は投資銀行が握っており、彼らは外国人の投資家に知名度のあるコミックであることをキーに出資を依頼する。などなど。

そういう話を耳にしていたのと、今回の主人公をクリスチャン・ベールがやる、ということ(わたしは「アメリカン・サイコ」を見て以来、この怪しい雰囲気の俳優が好きなのだ)、この映画を撮り終わってから死んだヒース・レジャーという俳優が迫真の演技をしていてアカデミー賞候補になっているらしいことなどに興味を惹かれて観に行った。

ストーリーは、アウトローの正義の代理人、あるいは「必殺仕置人」としてのバットマンを描いている。その中でのヒース・レジャーは、やはり光っている。彼は死なずにいれば、本当に次のジャック・ニコルソンになっていたのかもしれないと思う。
町山智博が言っていたが、コミックものしか作れないことを逆手に取って、そこでシリアスな表現を試みた映画ということかもしれない。ヒース・レジャーを見るためだけにも行く価値のある映画だと思う。
おまけにマイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンである。どおいうこっちゃねん?、という贅沢な布陣。ヒロインが一番、影が薄いかもしれない。

金曜日, 8月 01, 2008

「対決 巨匠たちの日本美術」展



東京国立博物館にて。タイトルどおり、日本美術の巨匠たちの作品を一堂に集め、対決させるという趣向である。

展示側の思惑はともかく、見る側の見方は人によっていろいろである。私自身にとっては「対決」という構図はどうでもよく、ただただそこにあるものたちのそれぞれの面白さが観たかっただけである。

実際、そのものたちをみれば、この展観は「圧巻」である。よくも集めたり、という感じだ。一時に様々なカテゴリーの秀作を、これだけのバリエーションで見られるチャンスはめったにないと言ってよいだろう。足を運ぶ価値が十二分にある。お薦めである。
6期に分けられた展示期間の最終タームである8/11から8/17には、宗達と光琳の風神雷神図が並ぶらしく、昨年?の出光美術館での出来事が思い出される。(プレゼンテーションの工夫でどちらの展観が美しく見えるかにも興味がある。)

茫渺としたイメージのある松林図屏風を描いた長谷川等伯の全く別の一面を知ったり、木喰と円空の明らかな違いがわかったりと、得るものの多かった展観だが、何より嬉しかったのは、これまでめぐりあう機会のなかった加賀光悦と、宗達の「蔦の細道図屏風」を見られたことである。いつかは観たいと思っていたものに偶然に出会うことができて、眼福・幸福であった。

図録はあえて買わなかった。最近は自分の中の発見が記録されているような図録でないと欲しくなくなっている。代わりに松林図屏風のミニチュアはがきを求めた。夏の間はこれを、若冲の鶴と入れ替えることにしよう。


この日は和装のチャーミングな女性が同行で、そのまま太田記念浮世絵美術館を回り、表参道の和装の店に立ち寄り、さらには夜は浴衣パーティであった。なんと和の一日であったことよ。