土曜日, 2月 21, 2009

モネ「印象 日の出」展:名古屋市美術館



先日、名古屋市美術館で「モネ 印象・日の出」展を観た。
最近は印象派の画家について、細かく分析的に観ることをあまりしなくなった。いつものように不思議な「懐かしさ」を感じる。行ったこともないのに。子供時代について自分が感じている印象と似ているのだろうか。

モネが17歳の頃に描いたという、コローのようなタッチの絵があったのが興味深かった。

今回は「印象派」の名前の元になったモネの「印象 日の出」が出ている。展示の目玉でもあるその絵は、赤いビロードで設えられた壁に一枚だけかかっている。天井が吹き抜けになっている。二階の展示室からもその絵が見えるのだが、その二階の方には「霧の中の太陽」がかかっている。



この絵は、モネが「印象 日の出」を描いてから30年くらい後に、テムズ河畔で描いたものである。構図と色合いはほとんど同じだが、筆のタッチが30年前と全く変わっている。画業30年、ひょっとしてもう白内障も進んでいたのかもしれないが、茫として優しい線のこちらの方が、私はより好きだ。
同じ壁には彼が何度かのテムズ河畔滞在で描いた同様の絵が何枚かかかっており、今回は飽きずにこれらを絵を眺めることになった。

そして、信じがたいことが起きる。

翌日、夕刻にセントレア空港から名古屋を離れた。離陸し上昇していたら、薄く霞のかかったような灰空色の中に、赤く小さな丸い太陽が現れた。空も海も区別がつかないような紫がかったブルーグレイの中、その光芒がわずかに海面にきらきらと反射していた。
それは、まったくそのまま、一日前に美術館で観たものと同じだった。なるほどな。画家はこれを見ていたのだな、と思った。
足下のバッグには一眼レフが入っている。しかしそれを取り出す時間も惜しんで、数分間の奇跡を目に焼き付けることにした。