神谷町の駅を出てホテルオークラ方面へ上って行くと大倉集古館に出る。大和文華館所蔵作品を中心とした富岡鉄斎の展覧会が行われていた。
最後の文人画家と言われた鉄斎について、私はあまりよく知らない。はっきり記憶しているのは先日訪れた富山の水墨美術館で観たものくらいだ。
飄々とした筆致だが、「間」を重要な要素とする日本画の中でも、執念深く描き込まれている。そのバランスが他の画家とは異なる感じがする。今回特に好みだったのは、画面の全面を墨で蔽って、月の部分だけを丸く抜いた「寒月照梅華図」であった。古典性と現代性が両方とも充ち満ちている感じがした。