土曜日, 7月 04, 2009

映画「桜の園」

1990年公開の方。監督:中原俊、出演:中島ひろ子つみきみほ白島靖代ら。
吉田秋生原作のマンガの映画化。毎年創立記念日にチェーホフの「桜の園」を上演する女子校の少女達の、一日の物語。

プレネット時代の映画である。誰も携帯やパソコンでネットを持ち出さない。少女たちは、女子校の限定されたリアル空間で言語・非言語のメッセージを交換している。ストーリーもそれに見合ったスピード感覚で進む。
満開の桜の下、ゆっくりと、一呼吸・ひと呼吸に応じるような、微細で繊細な美しさが、すこしづつ、すこしづつ積み重なって、惹かれあう二人の少女が、ドウラン化粧のまま寄り添って記念写真を撮る場面に結実する。

近年の映画には全く見られることがなくなった、ある美しさ、それを実現する手法がここに記録されている。当時そのような観点でこの映画を捉える人はいなかっただろうが(なぜならこれが「普通の」世界だったのだから)、当時とは全く変質してしまった現代から見るとこれもまた滅びた美なのだろうか、それとも今の時代にもこれは成立するのだろうかと思う。

例によってもう忘れてしまった理由でDISCASから届けられた、意外で、突然の美だった。お薦めです。
(注:2008年のリメイク版もあるようです。お間違えなきよう。)