「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)
建て替えられる木挽町の歌舞伎座(恐ろしく見目のよくない建物になるらしい…)のさよなら公演の一環として4月に上演されていた。
仙台伊達藩の御家騒動の実話に基づくという。若君を守る乳母・政岡とその子千松の物語が見せ場。
御殿の場。毒入りの菓子を察知し、飛び出して来て若君を守り、敵方の八汐(仁左衛門)に刺される千松。直前に政岡(玉三郎)と八汐の掛け合いで子供の存在を忘れていたところにいきなり飛び出して来て菓子箱を蹴散らし、さらに八汐に刺されるのでどきりとする。
刺されている我が子千松を目の前にしながら、若君を守り、立場上手が出せない政岡と、その千松を何度も刀で刺してなぶり殺しにする八汐。八汐がえいっ、と刀を動かすたびに千松が「あーっ」と悲鳴を上げる。
子供のなぶり殺しをプレゼンテーションしてみせるけれん味の歌舞伎らしさと、鬼のような形相で我が子の死を眼前にしながら、しかし若君を守って一歩も動かない玉三郎の演技に感心する。その後に、我が子の死と直面する場の演技にも。
以前に「寺子屋」という演目について、主従の関係から主を守るために我が子の首を差し出すことについて、その異様さを話したとき、とある歌舞伎の見巧者から「親子は一代、夫婦は二代、主従は三代」と教わりました。なるほどなあ、と再びそれを実感した次第。
玉三郎がきっちりとした作法で茶道具を扱うのにも感心。さらにその場で片手一つで座ったままくるっ、と回るのにはさすがだなあ、と思った。あれは並の茶人にはできない。:)