金曜日, 10月 26, 2007
恵比寿駅前にて
印象が薄れないうちに書いたほうがいいだろう。
先日、恵比寿にいた。写真美術館で鈴木理策の展示を観たあと、人と会って、近くの松玄で焼味噌と焼きのり、卵焼き、日本酒と最後に蕎麦を手繰ってからJR駅へ戻った。ふと思い出して気をつけていたら、やはりそこにその人がいた。
「ビッグイシュー」の販売人だ。
i-morleyで知ったこの雑誌は、ホームレスの人が手売りをしている。一部300円で、一冊売れるとダイレクトにその中から160円が販売人の収入になる。10冊売れば1600円で、たとえばとりあえずその日は食事をすることができる。そういう仕組みだ。オリジンは英国だそうだ。
JR恵比寿駅西口の横断歩道近くにその人はいて、はにかんでいるのかどうなのか、私には白い歯を見せて笑っているように見えた。そして右手にその雑誌を掲げている。
私は近づいていって「一冊下さい」と言って、イタリア製の革の財布から100円玉3枚を取り出して彼に渡し、雑誌を受け取った。無言だったと思う。それを手に持ったまま携帯のEdyで改札を通過し、山手線に乗ってからそれをCrumplerのリュックにしまった。リュックにはMacBookとキヤノンのデジタル一眼レフが入っている。そしてiPod ShuffleとSONYのノイズゲートつきイヤフォンを身に付けている。
背中に50万円分くらいのモノをかついだ私が、160円をホームレスの人に渡したのだ。それだけのことだ。もっと気の利く客なら、なにか差し入れでも持っていくのかも知れない。私はそれをしなかった。その前に5000円ちかく飲み食いして腹いっぱいで、食事に関連したことは思いつきもしなかった。
だが、私は今までこういうことであっても、ホームレスの人とかかわることがなかった。自分にとってはエポックメーキングなことであった。