土曜日, 1月 17, 2009

「浮かれ三亀松」吉川潮



深川生まれの稀代の芸人、初代柳屋三亀松の伝記。昔はこんな破天荒で、かつ江戸っ子の心意気を持った芸人がいたんだと再認識する。しゃべる言葉も由緒ある江戸風。
本の語り口は淡々としていてすこしダイナミズムに欠けるが、あとがきに書かれている「エピソードに(記述が)負けない」ための努力かもしれない。内容はとても面白い。
今はもうなくなりつつあるものがたくさん描かれている本。

本人の肉声が聞いてみたくなった。CDなどがいくつも出ているようだ。

土曜日, 1月 03, 2009

「アンドリュー・ワイエス展」Bunkamura(巡回あり)



アンドリュー・ワイエス展:
Bunkamuraで観た。ワイエスの名前は知っていて、有名な「クリスティーナの世界」も見知っている。どこかで別の絵を一枚見た記憶もある。が、あまり知らない人であった。一度はきちんと観ておきたいと思っていたところにBunkamuraで渡りに船の展覧会。

「ヤバい」という今風の(つまりポジティブな意味としての)日本語表現を私は嫌いだった。もちろん自分で使ったこともなかった。
ワイエス展に入り、最初の5枚は二組に分かれた彼の自画像だった。スケッチ程度のものがあり、着彩され整理されたものがあり、最後に完成品がある。絵のうまい人だな、と思った。
向かい壁に第六番目の絵があった。「オルソン家」それはクリスティーナの家である。(彼はこの家を何度も描いている。)グリザイユ風の濃淡の家と、それぞれ筆のタッチ一発で描かれた木々や下草。
それを見た瞬間、「あ、やばい」と自分自身が思った。これはハマる。抜けられないな、と。自分が嫌っていた表現におそらく近いものを、自分自身が体験してしまった。

この人はものすごく絵が上手な人だったのだ。微細で確かなデッサンを、田中一村のごとくに決めて描く。一本の確かな線を、ためらわずに描く。光の面で絵を構成する能力を持つ。そして、それらで描いた一つの絵を、再生産する能力を持っている。彼は天才的に上手な職人だった。

一枚の絵を、ドラフトスケッチから習作を経て完成画まで並べた展示から、彼の技量と、なにをどう整理したか、思考の過程がわかる。いい展示だと思った。

会場を去りがたく、3度出口から戻った。Bunkamuraでの展示は終わったが、2009年1月4日〜3月8日は愛知県美術館、その後2009年3月17日〜5月10日は福島県立美術館を巡回する。お薦めの展覧会である。

木曜日, 1月 01, 2009

謹賀新年



万葉集、大伴家持の歌。これが同集の一番最後の歌だというから、それにまた感心する。