日曜日, 11月 20, 2016

映画「トゥモロー・ワールド」

注意1:ネタバレしています。
注意2:「ザ・トゥモロー・ワールド」というまったく別の映画があります。


トゥモロー・ワールド:監督:アルフォンソ・キュアロン(カロン?)。「バンズ・ラビリンス」のプロデュース、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「ゼロ・グラビティ」など監督でメキシコ人とのこと。
メキシコの人と聞いて、なるほどな、という感じがした。フリーダ・カーロやディエゴ・リベラのように、メキシコ由来の表現は濃密な感じがして、この人もそういうものを受け継いでいるのだろうか、と思った。それを抑制的に使うことで、彼の作品は重圧感というか、迫ってくる感じがとても強いと思う。

この映画はいわゆる「長回し効果」でも有名で、分割された撮影だが緻密な編集技法で一度に撮ったように表現していて、しかもそれが6分以上にわたる戦闘シーンなど、厳しいところで使われているために非常に効果が高く、他に類を見ないほどの没入感で観客に迫ってくる。

ストーリーは、世界中でまったく子供が産まれない(流産してしまい生まれない)という未来世界の中で展開する。次世代がいない、つまりゆっくりとだが人類の滅亡・社会の崩壊が約束されているディストピアでの話だ。そこは無政府状態で難民問題が顕在化している。
その中で、たまたま出現した唯一人の妊婦を、新世界に送り届ける物語だ。

妊婦は反政府ゲリラと政府軍の戦闘のさ中に出産し、戦場に突如赤子が出現する。その赤子は、全世界で唯一の新生命だ。
そして、人々のその赤子の扱いが胸に迫る。愛とはなにか。人類はなにを求めなくてはならないのか。言葉にする必要のない感覚的・本能的・直感的な真実が立ち現れ、観客は胸を掴まれる。

映像の威力に任せて没入して観ていると、他のどんな映画でも得られない感覚と真実を提示してくれる映画だ。ぜひお薦めしたい。